2025年8月19日、株式会社パルコは新たなゲームパブリッシングレーベル「PARCO GAMES(パルコゲームズ)」の立ち上げを発表しました。
ファッション・アート・サブカルチャーをつなぐ文化発信企業として知られるパルコが、いよいよゲーム業界に本格参入。インディーゲームを軸に、リアルとデジタルを融合させた独自の展開を目指します。
文化を育ててきたパルコの新たな進路
パルコはこれまでも、イベントやECを通じてゲーム関連の展開を行ってきました。2023年にはゲーム事業専任チームを立ち上げ、2024年9月には「ゲーム事業開発部」を設置。ポップアップやEC、メディア運営、コラボ企画などを通じて独自のゲームカルチャー発信を試みてきました。
これらの取り組みをさらに発展させ、事業の継続性と専門性を高めるべく、今回「PARCO GAMES」というブランドが新設されたかたちです。いよいよパルコが“ゲームを届ける側”として動き出す時が来たと言えるでしょう。
「PARCO GAMES」は何を目指すのか?
PARCO GAMESの中核には、インディーゲームとのパートナーシップがあります。大手企業が参入しづらいような独創性や実験性のある作品を拾い上げ、クリエイターと共に育てていくことが重視されています。
加えて、パブリッシング支援にとどまらず、企画開発・販売・プロモーション・二次展開までを一貫して担う点が特徴です。全国に15店舗を展開するパルコという「リアルな場」を活用し、展示イベント、店頭販売、広告展開、EC連動など多角的にゲームとユーザーをつなぎます。
ECサイト「ONLINE PARCO」は、各ゲームタイトルの公式オンラインショップとしてリニューアルされる予定で、オフィシャルグッズ販売などにも活用される見込みです。
つまり、PARCO GAMESは“売って終わり”のパブリッシャーではなく、リアルとデジタルの両軸からタイトルの世界観を広げていく支援者を目指しているのです。
第一弾タイトルと今後の展開
PARCO GAMESが最初に手がけるゲームタイトルは以下の3作品。いずれも2025年冬リリースを予定しており、インディーゲームならではの表現力と物語性を携えた注目作です。
タイトル | 開発スタジオ | 概要 |
---|---|---|
南極計画 | RexLabo(日本) | 荒廃した900年後の南極を舞台にした、探索と生存がテーマのアドベンチャー |
CONSTANCE | btf Games(ドイツ) | 美しい精神世界を舞台に絵筆で戦う、高難度2Dアクション |
The Berlin Apartment | btf Games(ドイツ) | ベルリンのアパートを通して120年の人生を体験する、3D探索型アドベンチャー |
このうち『南極計画』は日本国内の開発スタジオによる作品で、パルコの“メイド・イン・カルチャー”の精神とも相性のよい一作とされています。
また、東京ゲームショウ2025への出展も決定しており、今後の動向には業界内外から大きな注目が集まりそうです。
まとめ:ゲーム×カルチャー融合の時代に、“小さな声”を届ける存在に
パルコのゲームパブリッシング参入は、単なる新規事業ではなく、これまで育んできた文化発信のノウハウをゲームという新たな媒体に広げる挑戦だといえるでしょう。
近年、TOHO games(東宝)や集英社ゲームズ、Netflix Gamesなど、異業種からのインディーゲーム分野への参入が相次いでいます。これらの企業は、映像や出版といった自らの強みを軸にゲームと融合し、独自のレーベルを立ち上げてきました。
そんな中、パルコが提供する「リアル店舗」「ポップアップイベント」「ファッション・アートとの掛け算」という独特のアプローチは、他にない存在感を放っています。単に“売る”のではなく、“見せる・触れる・感じる”ゲーム体験を提供できるのは、パルコというブランドならではでしょう。
今後の課題としては、継続的なタイトル供給や、プレイヤーとの接点づくりの強化、グローバル展開などが挙げられますが、インディークリエイターにとって新たな選択肢が生まれたことは間違いありません。